内藤陽介 Yosuke NAITO
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 フィラデルフィア違い
2007-10-09 Tue 11:32
 新聞を見ていたら、明日(10日)から東京・上野の東京都美術館で「フィラデルフィア美術館展」が開催されるという記事が出ていました。というわけで、ちょっと毛色の変わった“フィラデルフィア”ネタとして、こんな1枚を持ってきてみました。(画像はクリックで拡大されます)

アンマンのモザイク

 これは、1989年にヨルダンで発行された切手で、首都アンマンの古代の風景を描いたモザイク画が取り上げられています。モザイク画の上部には、アンマンの旧称である“フィラデルフィア”の文字がギリシャ語でしっかりと入っています。

 現在のアンマンの地に人々が定住するようになったのは、およそ9000年前の石器時代のことと考えられています。

 古代エジプト王朝は、アメン神の名を冠した“アンモン”という名の都市を建設しましたが、旧約聖書の時代、この地は“アンモン人の都”の意味でラバト・アンモンと呼ばれていました。その後、ラバト・アンモンは、アッシリア、ペルシャ、マケドニアの征服を経て、ギリシャ語でフィラデルフィアと呼ばれるようになります。そして、紀元前1世紀にはローマ帝国の支配下に置かれ、ビザンツ時代には主教区としてキリスト教文化が栄えました。ちなみに、アラビア語のアンマンという地名は、西暦5世紀末から7世紀はじめにかけてシリア一帯を支配したガッサーン朝の下で使われてから定着した名前です。

 アラブの大征服によってイスラム世界に編入された後も、ウマイヤ朝の時代は首都のダマスカスに近いこともあって、アンマンはそれなりに繁栄していました。しかし、アッバース朝の時代にバグダードが帝国の首都になると、首都から離れたアンマンは次第に衰退。19世紀半ばまで、ローマ時代の遺跡しかない寒村として、忘れられた存在となっていました。

 ところが、1887年、北カフカスのチェルケス人が帝政ロシアの弾圧を逃れて、当時オスマン帝国の支配下にあったシリアに亡命し、フィラデルフィアの廃墟周辺に居住するようになったことで、アンマンにはふたたび街区がつくられはじめます。

 そして、第一次大戦後、オスマン帝国が崩壊し、英仏が帝国のアラブ地域を分割していく過程で、東地中海南部を勢力圏に収めたイギリスが、1921年にヨルダン川東岸地域に委任統治領としての“トランスヨルダン”を創設すると、アンマンはその首都となりました。

 その後、パレスチナ問題が深刻化すると、パレスチナの地に隣接するヨルダンとアンマンの重要性が増し、郵趣的にも面白いマテリアルがいろいろと登場してきます。そのあたりについては、以前、『中東の誕生』という本でまとめてみたことがあるのですが、その後いろいろとマテリアルも増えましたから、近いうちに改訂版を作れれば良いな、と考えている今日この頃です。
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この記事のコメント
#1032
新約聖書にも、けっこうフィラデルフィアという都市名が出てきますが、こちらは、トルコ・アナトリアにあった、ギリシア系の都市のようですね。
2007-10-09 Tue 20:41 | URL | まこり~の #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
#1033 モザイク画
 奈良県の天理参考館で中東の美しいモザイク画を何点か見たことがあります。人物やイルカなどが描かれていて、いずれもせいぜい畳一畳ほどでした。今回の切手図案のような作品になると、かなりの大作かも知れません。

  「フィラデルフィア」は、Wikipediaによると「古代ギリシア語で『兄弟愛』を意味する語 (Φιλαδέλφεια)」だそうで、世界中にいくつもの同名都市があるようです。ヨルダンのアンマンの場合、古代ギリシャ文化の影響を受けた名残なのでしょうね。
2007-10-10 Wed 07:00 | URL | muraki #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
 皆様、コメントありがとうございます。

・まこり~の様
 現在、アラブ世界に組み込まれている東地中海一帯は、古代では基本的にギリシャ系の都市だったので、あの地方の切手には時々、ギリシャ時代の遺物が取り上げられますよね。

・muraki様
 現代の日本語では“モザイク”というと、なにやら別のモノを連想する向きが多そうですが、本来のモザイク画の美しさをもっと見直してほしいと思います。
2007-10-11 Thu 00:43 | URL | 内藤陽介 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
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