内藤陽介 Yosuke NAITO
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 英雄/テロリスト図鑑:ダライラマ
2007-12-03 Mon 09:16
 ご報告が遅くなりましたが、『SAPIO』12月12日号が発売となりました。僕の連載、「世界の『英雄/テロリスト』裏表切手大図鑑」では、今回は先ごろ訪日したダライラマ14世を取り上げています。(画像はクリックで拡大されます)

ダライラマ

 チベットの宗教的・政治的最高指導者であるダライ・ラマの地位は、世襲や選挙ではなく、先代が亡くなった後に、次の生まれ変わり(化身)を探す「輪廻転生制度」によって決定されますが、ラモ・ドンドゥップ少年は、2歳のとき、ダライ・ラマ13世の転生者、すなわちダライラマ14世であると認定され、6歳のときから僧院での学習を開始しています。

 1949年10月に成立した中華人民共和国は、1950年10月、チベットを中国の一部とし、国防は中国が担当することをチベットに対して一方的に“提案”。チベットがこれを拒否すると、人民解放軍はチャムド(昌都)に侵攻して、チベットの“解放”を宣言します。翌1951年5月には、「チベットの平和解放に関する17ヵ条協定」をチベットに押し付け、チベットを“自治区域”として強引に中国の主権下に組み込んでしまいました。

 当然のことながら、チベットでは中国に対する抵抗運動が発生。1956年以降、各地で反中国のゲリラ活動が展開されていきます。

 こうした状況の下で、1959年、23歳になったダライ・ラマがラサのジョカン僧院でラランパの学位(最高位のゲシェーの学位で仏教哲学の博士号)を取得し、チベット仏教の修行をすべて修了すると、同年3月、中国側は彼を観劇に“招待”しました。これに対して、ラサ市民は、観劇を口実にダライ・ラマを拉致しようとの中国側の意図を察知し、抗議のためにダライ・ラマの宮殿を包囲。解散を求める中国軍との間で衝突から、大規模な暴動(ラサ暴動と呼ばれる)が発生します。

 結局、“暴動”は3月中に鎮圧され、騒乱の中でダライ・ラマはチベット臨時政府の樹立を宣言してインドに脱出。以後、半世紀近くにわたって、インド北部のダラムサラを拠点とした亡命生活を余儀なくされています。

 ダライ・ラマ法王部日本代表部事務所によると、1959年以降、中国政府の弾圧で亡くなったチベット人はチベットの全人口の2割に相当する約120万人。また、6000ヵ所以上もの寺院が破壊されているとのことです。当然のことながら、国際社会は中国によるチベットの人権侵害をたびたび問題にしていますが、中国側がこうした批判を内政干渉としてことごとく退けているのは周知のとおりです。

 ダライラマ14世は、このような中国政府と、チベットの“高度な自治”を求めて非暴力の運動を展開し、ノーベル平和賞まで受賞した人物ですが、中国政府に言わせると、中国の分裂を狙うテロリストの一味ということになるようです。

 たとえば、今年の10月17日、アメリカ議会がダライ・ラマ14世に対して、民主主義・人権問題で功績のあった市民を対象とする最高勲章“ゴールド・メダル”を授与すると、“チベット自治区”の張慶黎・共産党委員会書記は、記者団に対し「憤りを感じる」、「ダライ・ラマがそんな勲章を与えられるなら、世界に正義や善人は存在しななくなる」、「(ダライ・ラマは)母国を分割する目的でその試みを確立するために、台湾独立軍や、東トルキスタンのイスラム勢力、民主主義運動に法輪功と同盟し徒党を組んでいる」と強く非難しています。まさに、ダライ・ラマは反中国のテロリスト集団と“徒党”を組んでいる一味という中国側の認識が明らかにされています。

 まぁ、客観的に見るとどちらが“テロ”の名にふさわしいかは明白だと思うのですが、現実には、インターネット検索エンジンの最大手グーグルが、中国政府の求めに応じて、“ダライ・ラマ14世”を中国語での禁止ワードとするなど、“中国様”のご意向に気兼ねして、なかなか本当のことを言えない人たちも少なくないようです。

 なお、雑誌の記事では、ダライラマとチベット地図をえがく亡命政府の“切手”を取り上げたのですが、こちらは以前の記事でもご紹介しましたので、今回は、同じセットの中から、ダライラマとチベット国旗を取り上げたものを持ってきました。ちなみに、この“切手”は万国郵便連合(UPU)100周年を記念して発行されたものですが、チベット政府がUPUに加盟したことはありません。このため、かつてチベット政府が発行した切手を貼って海外に差し出すときには、インド切手とのコンビネーションカバーができあがるのですが、その辺の事情については、いずれ機会を改めてご説明することにしましょう。
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